さて皆さん、作文を書く(重言ですねw)とき、どういう場面でカタカナを使用しますか? あるいは読書をするとき、どういったときにカタカナ表記に違和感を覚えますか?
その話に入る前に、まずは、カタカナの由来についておさらいをしておきましょう。カタカナの起源は9世紀初頭にさかのぼり、漢文を和読するために、訓点として借字(万葉仮名)の一部の字画を省略したものだと考えられています。つまり、
国破山河在
を和読するために、
国破レテ山河在リ
としたわけですね。こういう出生がゆえに、カタカナは漢字の音や和訓を注記するために使われることが多く、記号的・符号的性格が強いわけです。正式な言葉とは言いかねるような、擬音語、擬態語、外来語に使われるようになったのもうなずけるというものです。
ではここで今一度、カタカナ表記をするのが一般的なものについておさらいをしておきましょう。
1.固有名詞(地名・人名・組織名・団体名・題名など)
ハワイ、マイケル、ソニー
2.外国語(日本人のカタカナ英語・ブロークン英語を含む)
ホワーイ
3.外国人による日本語(の音声)
コンニチワ
4.外来語(和製英語を含む)・近代音による漢語
スパゲッティー
5.擬音語・擬声語
6.動物や植物の和名・俗名
キリン、ブタクサ
7.強調。(英語ではイタリック体で書くような場面)
あのオジサンはとてもカッコイイ
まあ学校で習ったまんまであり、学業優秀なられる読者様であればいまさらであることは十分承知の上、話を進めましょう。
注目すべきは、もちろん5番の擬音語・擬声語ですね。これは同時に、「擬態語はひらがなで表記する」という意味も含んでいるわけです。
これらの表記に関しては、ここで話題にするのもはばかれるくらい議論がなされてきました。よく取り上げられる選択問題を、ここで改めてご紹介しましょう。
1.星が(きらきら・キラキラ)している。
2.犬が(わんわん・ワンワン)ほえた。
3.うさぎが(ぴょん・ピョン)とはねた
答えは、そう青文字の方ですね。すんなり全問正解した人は、優等生で面白みのない人。自信満々で全問不正解だった人は、もう救いようのない語学オンチ。そして、わかっているけどわざと間違えたあなたは、とんだへそ曲がり野郎ですね。
しかし私には、へそ曲がり野郎の気持ちがよくわかります。星は当然のようにキラキラだし、うさぎは誰がなんと言おうとピョンだろう、と。そしてそれは私だけではなく、世の多くの著名な作家にも言えることなのです。たとえば、
志賀直哉 『万暦赤絵』 (玄関へ)ドヤドヤ(と出迎へた)
片岡鉄兵 『思慕』 カツと燃え立ちさうな
中山義秀 『厚物咲』 ペコペコお辞儀をしながら
宮沢賢治 『やまなし』 キラキラッと黄金きんのぶちがひかりました
そして極めつけが、江戸川乱歩。たとえば「百面相役者」。
一ページ目からさっそく、「――いやにドロンと曇った春先の――」、三ページ目には「――サッサと外出の用意を――」、同、「――テクテク歩いて――」,続けて「からだじゅうジットリ汗ばんで――」等々、わずか数ページでこのありさまなのです。彼が先の問題を解いたなら、おそらく0点だったでしょう。まあなにしろ、エドガー・アラン・ポーを漢字にして、それをペンネームにしてしまったくらいですから、これも仕方がないのかもしれませんね。(断っておきますが、江戸川乱歩の擬態語の使い方はけっして不自然ではなく、読む者を摩訶不思議な世界へ引きずり込む、絶品でなのです)
僕の個人的な考えとしては、きちんとルールを理解したうえで、時には変化をつける、あるいはアクセントをつけるといった意味で、こういう掟破りも有りなのでは、と思います。
ただし、著名な作家がやるから意図的なものだと思われるのであって、無名な我々がそれをやったら、たんなる無知の誤用と思われるだけかもしれませんけどね。
いつものようにオチはないけど、今回はこれにてお終い。
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