2012年9月8日土曜日

「地下鉄(メトロ)に乗って」

浅田次郎さんの「地下鉄(メトロ)に乗って」を読み終えた。言葉にできない余韻が後を引き摺る。爽快な感動と、自虐的な反省と、そして絶望感。前の二つの感情は、おそらくこの本を読まれた読者であれば同様に感じられたのではあるまいか。たったの三百ページ強の中に、これほどの人間の情の複雑さと美しさを詰め込むこの巨匠は、やはり天才である。なおかつ、現在のひ弱な我々日本人が忘れてしまった、「生きることの難しさと、嗚咽が漏れるほどの魂の叫び」、その大切さがひしひしと伝わってくる。
私の覚えた最後の感情、つまり絶望感は、作家を目指す自分にとっての絶望感である。もちろん、これほどの巨匠に嫉妬を感じる資格もない小職ではあるが、それでもこの作品の描き出す世界は、あまりにも衝撃的だ。百年経っても越えられない。読後と言うよりも、むしろ自分自身が永い、それも極めて永い旅を終えてきたときのように、切なくて、そしてほろ苦いセピア色の世界から抜け出せないでいるのだ。
未読の方がいれば、ぜひ読んでいただきたい。いや、読まなければならない。俗物主義に染まった我々日本人が忘れてしまった熱い世界、メトロがそれを教えてくれるに違いない。

2012年9月2日日曜日

「出来損ないの天使」 新規公開

ずいぶん前に書いた作品です。以下2か所のオンライン書店にて販売(100円)
(書店名をクリック)

Wook 
パブー

いったい何のために生まれてきたのか--私利私欲の道具として創られた一人の出来損ない、絶望の淵からようやく彼が見つけたのは――