2015年3月20日金曜日

「エンジェル」無料キャンペーンのお知らせ

 ただ今エンジェルの無料キャンペーンを実施中です。本作品は人類創造論を礎石とし、創造主である神々がその太古、人類に施したある仕掛けに起因する人類滅亡の危機と、それに立ち向かう人間達の戦いの物語です。
 その「ある仕掛け」というのは他でもなく遺伝子操作であり、巧妙に仕組まれたそれは、数千年後の現在に至って初めて起動するという恐ろしい代物です。その仕掛けは人類の細胞核DNAに施されており、それを回避する鍵はミトコンドリアにあります。

 奇しくも本作品に登場する人類救済の最終手段が、つい最近、英国で合法化されました。それは以下のものです。

「親3人」の体外受精技術が英国で合法化、来年にも実施へ



早ければ2016年の秋「3人の遺伝子を受け継いだ赤ちゃんが誕生」することに! 遺伝子疾患予防のための卵子核移植導入を認める法案が成立


 詳細は記事を読んでいただくとして、簡単に言えば、「異常のあるミトコンドリアを、健康なそれに交換する」というものです。当然そこには倫理的な問題が存在し、これまでは公には施すことの出来ない手法だったのです。(記事にあるとおり、両親に加えてミトコンドリアの提供者が3人目の親になるのです)
 
 興味を持たれた方はぜひ、以下より作品を入手して読んでみてください。遺伝子に興味のない方にも愉しめるよう、出来るだけわかりやすく解説したつもりです。キャンペーンは月曜日の夕方5時までです。よろしくお願いいたします。

追記) 「電子書籍の窓」さんに小生のインタビュー記事を掲載していただきました。




電子書籍の窓(書評あり)



2015年3月14日土曜日

執筆中の新作のご紹介

 怠け者の自分にハッパをかけるべく、現在執筆中の新作の冒頭部分を紹介させて頂きます。妖怪をテーマに据えた作品ですが、その裏にあるのは”理不尽”に対する鬱積した思いと、疑問です。ただ今50ページを書き終えたところで、最終的には150ページの第一部(無料配布予定)と、200ページの第二部という構成にするつもりです。乞うご期待!




百鬼大戦

――そして彼は妖怪になった――


序章 狂乱前夜

 彼は夢を見た。先生になじられ、クラスメートに嘲笑われ、八方から襲い来る陰鬱な重圧に押しつぶされそうな嫌な夢だ。算数も、国語も、体育も、音楽も、何をやっても上手くいかなくて、楽しいことなんて何もなかった。
 そうするうちに、舞台はコンビニに移った。レジを打ち間違えては店長に叱責され、袋詰めに手間取ると今度は客から罵声を浴びた。ひとまわりも年下と思しき若者が、眉間にしわを寄せて唾を飛ばしている。アパートに帰ると、部屋は寒くて暗くて、そこで一人食べる弁当は、とても惨めだった。テレビもなければ、パソコンもない。
 生きていること自体が憂鬱になりそうな、そんな毎日だった。でもそれはたんなる夢ではなく、数日前までの、まさに彼の現実だったのだ――。
 とそのとき、遠くで彼を呼ぶ声がした。早く逃げておいで、そう言っているように聞こえる。そしてその声は次第に大きくなり、いつしか無機質な電子音に変わり、耳元でけたたましいノイズをまき散らし始めた。
 枕元に手を伸ばし、スヌーズボタンを押して音を止めると、彼はほっとため息をついた。
「ふー、夢か……」
 彼の口にした「夢」という言葉は、すなわち彼の「過去」を意味していた――
 今にして思えば、ずいぶんとひどい人生を歩んできたものだ。物心ついてから三十余年、とにかく惨憺たるものだった。しかし当人はそれを当然のことと捉えていて、まさかそれが本人の資質や努力とは関係なく、第三者たちの思惑によって勝手に決められていたなどとは、ほんの一ヶ月前までは知る由もなかった。まったくおめでたい話である。おめでたいと言えば、彼の名前にしたってそうだ。
 山田太郎――絵に描いたような凡庸な名前。これだけでも、浮かばれなかった彼の人生が計り知れようというものだ。
 太郎は上体を起こし、窓から射し込む淡々しい陽光に目を細めると、固いベッドから降りて洗面所に向かった。
 髪をかき上げ、眼前の鏡を覗くと、いつも見慣れた顔がそこにあった。面長の顔に少し細めの目、薄い唇、広めの額に垂れた黒い髪。見慣れたわりには、不思議と新鮮に思える――そう、一ヶ月前とは何かが違っていた。じゃあ何が、と訊かれても答えようがなかったけれど、表層からは見て取れない何かが変わり始めているのだ。
「きっと美玲さんのせいだ……」
 ひとり呟くと、太郎は冷たい水を両手ですくい、それを顔に叩きつけた。

 二月に入り、寒さはますます厳しさを増し、ありったけの防寒着で身を包んでも、それでも震えが止まらない。物理的な気温の低さもさることながら、弱々しい陽光に浮かぶ葉の落ちた街路樹の描く寒々しい景色も、体感温度を下げるのに一役買っているのかもしれない。
 顔をマフラーで鼻まで覆い、手袋をはめた手をさらにポケットに突っ込み、太郎は道を急いだ。向かう先は、コンビニだ。といっても買い物をするのが目的ではない。自動ドアをくぐり店の奥に進むと、弾んだ声が飛んできた。
「おはよう、太郎」
「あ、おはようございます」
 太郎は慌てて挨拶を返すと、小走りで従業員用の通用口に向かった。
 ブルーの縦縞の制服に着替えると、太郎はふたたび店内に戻った。レジでは小林美玲が、中年の男性客の応対に追われている。
「またあのおっさんだ……」
 太郎が思わず口にしたのも無理はない。禿げ上がった頭に黒い帽子を被り、小太りの体を白衣で纏ったその男は近所の喫茶店のオーナーで、名前は山岸権太、日に五度は店に買い物にやってくる常連だ。といっても何度も来る必要なんて本来はなくて、今度は牛乳、今度はパンといった具合に、無理やり何度も足を運んでいるのだ。目的は、もちろん美玲である。それが証拠に鼻の下を伸ばし、たわいもない世間話をして、何とかお近づきになろうと必死な様子が見て取れる。しかしそこは美玲も心得たもので、嫌な顔一つせず笑顔を浮かべながらも、会計を済ませると、
「じゃ、権さんまたね」
 そう言ってさも忙しそうにレジを離れ、店内の棚の整理を始めた。山岸権太はその美玲の後ろ姿を名残惜しそうに眺め、重い足を引きずるように渋々と店を出て行った。
「橋爪君、太郎が来たからもう上がっていいわよ」
 美玲が言うと、棚に弁当を並べていた痩せた青年がその手を止めて振り向き、「あ、はい」と、寺の小僧のように刈り上げた細長い頭を小さく垂れた。
 この橋爪というのは夜勤のアルバイトで、まだ二十歳の大学生だ。夜の十二時から朝の八時まで働き、太郎と入れ替わりにそのまま大学へ登校するという、いわゆる苦学生である。着替えを終えて、「じゃ後はお願いします」と店を出て行く橋爪の小さな背中を、太郎は憐憫の情の浮かんだ目でじっと見つめた。
「かわいそうに……」
 他人事ではなかった。一ヶ月前までは太郎だって同じような、いやもっと悲惨な生活を送っていたのだ。しかも本人には何の責もない。だからどんなに努力しても、状況がそう大きく好転することは期待できない。今の彼の苦境は、じつは彼の問題ではないのだ――

「太郎、レジお願い」
「はい、美玲さん」
 見るといつのまにかレジの前に客がひとり立っていた。小柄な若い女性で、白いセーターに赤いスカート、地味目な顔は派手さはないが整っていて、清涼感溢れるその姿容には記憶がある。最近よく店にやってくる客だ。
 太郎は小走りにレジに向かい、さっそく会計を始めた。お菓子やらジュースやらを詰めて、「三百八十二円になります」ビニール袋を前に差し出すと、女性は財布から四百二円を出し、太郎がそれを受け取り二十円を返すと、女性は何か言いたげな顔でじっと太郎の目を見つめた。
「何か?」
 太郎が訊ねると女性は少し悩んだ素振りを見せ、そして意を決したように口を開いた。
「こ、これ……」
 見ると白いふっくらした手に小さな紙切れを握っている。
「えっ?」
 太郎が首を傾げると、「一度、ゆっくりお話がしたくて……もしよかったら、電話ください。待ってます」
 そう言って紙切れをレジの上に置き、くるりと踵を返し、逃げるようにして去って行った。太郎が改めて紙切れに目をやると、たいそう滑らかな字で、名前と電話番号が書かれている。そうっと店の奥に視線をやると、美玲は背中を向けて棚に手を伸ばしていた。ほっとした表情を浮かべ、太郎はさりげなくその紙切れをポケットのなかに忍ばせた。
 平日の朝は十時くらいまでが客のピークで、その日も金曜日とあって、例外なく太郎はレジで精算に追われた。そして十時過ぎになってようやく一息ついたとき、美玲がそばに寄ってきて、問い詰めるように言った。
「さっきの、なに?」
「えっ?」
 ドキッとして太郎が訊き返すと、
「紙切れよ。ポケットの中に入れたでしょ」
 美玲が上目遣いに睨みつけた。太郎が口の中で言葉をくぐもらせていると、
「いい、無駄なことにエネルギーを使うんじゃないわよ。そんなことのためにあなたを奪ったわけじゃないんだからね」
 そう言って太郎の顔をのぞき込んだ。勢いに押されて頷いたものの、太郎には言いつけを守ろうという気などさらさらない。もちろん美玲には感謝しているし、恩義も感じている。でもそれとこれとはまた別の話だ。それに三十年以上も不遇な人生を歩んできたのだ、少しくらい愉しんだって罰は当たるまい。太郎はそう自分に言い訳をして、ふたたび仕事に向かった。

 翌日の土曜日は夕方五時に仕事を終えた。遅番のアルバイト店員――といってもこちらはすっかりくたびれた中年のオジサンだが――の米倉茂に交代して、美玲に悟られないようにさりげなく店を出た。店を出るとその足で横浜駅の西口の、鶴屋町という繁華街に向かった。通常なら歩いて二十分ほど要するところだが、気持ちが浮かれていたのだろう、その日はわずか十五分しかかからなかった。スマホの地図を頼りに人混みをかき分け、細長い雑居ビルの前に立つ。
「ここだ」
 店はこのビルの三階にあるようだ。青い看板に『ザ・パブ』と、白い文字が浮かんでいる。エレベータを降りると、すぐその前が店の入り口だった。重厚な木製のドアを押し開けると、目の前に薄暗い空間が広がった。奥に細長いつくりで、左側がカウンター、右側に二人がけの小さなテーブルが五つほど縦に並んでいる。黄色いダウンライトで照らされた店内はアールデコ調で、あちこちに磨き上げられた真鍮が施され、机も椅子もみな歴史を感じさせる洒落た逸品ぞろいだ。
「あっ、いた……」
 すぐにわかった。なにしろ、あわてて腰を浮かせて右手を振っているのだ。待ち合わせの六時までまだ二十分以上もあるというのに、ずいぶんとご執心なようだ。最奥のテーブルまで行くと、「待たせた?」そう訊きながら太郎は椅子を引いた。
「いえ、私も今来たばっかりだから」
 赤井里美――それが彼女の名前だ――ははにかむように笑い、浮かした腰を改めて椅子に沈めた。
 さっそくビールを注文し、乾杯を済ませると、太郎が先に口を開いた。
「会社が近くにあるんだったよね」
「ええ。ここから十分もかからないんです」
「仕事は何を?」
「経理です。事務用品の販売をやってる会社で」
 そう言って里美は両手で包むようにグラス握り、ゆっくりとをそれを口に運んだ。そのいかにも上品な仕草を見ながら、太郎は、心底から言い知れぬ衝動が突き上げるのを覚えた。それは一ヶ月前のあの事件が起こる前までは、およそ彼には縁のなかった類いの感情だった。
 一時間ほど食事をしながら会話を楽しみ、二人はもうすっかり飲みに徹していた。明日が休みということもあってか、里美はすでに頬を桜色に染めながらも、いつもよりずっと早いペースでグラスを空け続けた。飲む量では太郎も決して負けてはいなかったが、里美とは違い一向に酔う気配がうかがえない。じっさい彼は飲むほどに頭が冴え渡り、その一方で、例の衝動はますますその勢いを増す一方であった。
 さらに一時間が過ぎ、潤んだ里美の清楚な瞳に、妖しい牝の色が微かに滲み始めた。そしてそうなることが、なぜか太郎にはわかっていた。と言っても別に、太郎そのものに人並み外れた魅力があったわけではない。そんなことは百も承知だ。彼自身は、一ヶ月前の冴えない彼と何も変わらないのだ。里美が魅せられているのは、太郎の放つオーラなのだ――。
「そろそろ店を変えようか?」
 太郎が訊くと、里美は少し躊躇う素振りを見せ、
「うちで飲みません? ここからだとタクシーで十五分ほどなんです」
 熱い目でじっと太郎を見つめた。迷う理由などなかった。
「いいね」
 そう言って、太郎はさっそく腰を浮かした――

 翌朝、太郎が目を覚ますと、隣で若い女が小さな寝息を立てていた。起こさないようにそうっと布団から抜け出し、洗面所に向かった。そこはいかにも女性の住まいといった小綺麗なアパートで、六畳が二間あるだけで決して広いとはいえなかったが、余計なものがない分すっきりしていて、とても清潔感に溢れていた。
 顔を洗ううちに昨夜の記憶が徐々に蘇る。あの清楚な里美が、太郎の放つオーラに刺激されたのか、獣のように激しく腰を振り、夢中で彼の肉体を貪った。それは太郎の期待していたとおりであって、太郎も狂ったようにその欲望を彼女の白い体に叩きつけた。もう九時を過ぎようというのに里美がまだ寝ているのも頷けようというものだ。それほど激しく、それほど長く、二人はお互いの体に淫靡な快楽を求め合ったのだ。
 幸いにも今日は遅番で、店に出るのは夕方の四時からだ。それまでに出来るだけ英気を養っておかないと、美玲にすぐに見破られてしまう。無駄に(あくまでも彼女に言わせればだが)エネルギーを費したことを知られてしまうと、何を言われるかわかったものではない。なにしろそれは本来は太郎のエネルギーではなくて、美玲のそれなのである。
 しばらくすると里美が目を覚ました。昨夜あれほど乱れたくせにいまさらという気がしないでもないが、白い下着姿を恥ずかしそうに隠しながら、部屋着と思しき薄いピンク色のスウェットを上下に着ると、「おはようございます……」とさも照れくさそうに朝の挨拶をして、「今から朝食の準備をしますね」そう言って台所に向かった。ピッチリと張り付いたスウェットの奥で揺れる柔らかいお尻、それを見つめる太郎の体の奥で、少しだけエネルギーが蘇ってきた。
 トーストにハム、スクランブルエッグにヨーグルト、それにサラダといったさも健康的な朝食を済ませる頃には、すっかり太郎の英気も復活していた。まったくたいしたものである。持ち主が変わるだけで、まるで別人のようだ。改めて太郎は、美玲という新しい主人の存在に感謝の念を禁じ得なかった。
「きょうはどうします?」
 里美が清楚な顔で訊くと、つい太郎は昨夜のことを想い出し、もう一度その柔らかい体を抱こうかとも考えたけれど、美玲のことを想い出し、何とかその気をとどめた。
「映画でも観に行こうか?」
 太郎が訊くと、
「わあっ、楽しそうですね!」
 弾むように言って、里美は明るい笑みを飛ばした。
 二人はみなとみらいに足を運び、映画を観て、昼食を楽しみ、ショッピングに興じた。太郎にとっては、この上ない幸せな時間だった。しかしこの夢のような生活も、放っておいたらまた過去の悪夢に戻りかねない。そのこともよくわかっていた。カラクリをすべてを知ってしまった今、彼のすべきことははっきりしていた。闘うしかないのだ。美玲と一緒に。そして今のこの幸せを守り抜くのだ。この世にはびこる、いやこの世を陰で動かす、恐ろしい妖怪どもと闘って――

2015年3月8日日曜日

無料キャンペーンの結果(途中)報告

 木曜日の夕方から開始しました「除妖師」の無料キャンペーンですが、ほぼ3日が経過いたしました。ということでここで途中報告を。
 DL数は約200。当初の目標は100でしたので、1日を残してのこの結果は出来過ぎと言えるでしょう。これもPRの場をご提供頂いた各サイト運営者の方々や、Twitterで宣伝ツイートをRTしてくださった心優しい人たちのおかげです。この場を借りて御礼申し上げます。

 ちなみに1年半前に行った無料キャンペーンの結果こちらになります。



 キャンペーンの終了までまだ1日残しておりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。



2015年3月5日木曜日

無料キャンペーンのお知らせ 『除妖師』

 初出版から一年半になる初期の作品ではありますが、3月5日~3月8日までの4日間、無料キャンペーンを実施させていただきます。除妖師という作品です。小生にしてはめずらしくユーモラスな作品で、人の心を操る妖術師たちの驚天動地なる活躍を描いた作品です。
 この除妖師シリーズは、無料配布1000部以上、有料販売も1000部を超える、小生の作品の中でも最大のヒット作となっております。
 当事一世を風靡したかの眼鏡型ガジェット、Goo●eGlassも登場し、自慢ではありませんが、それが失敗するであろうことを早くも予見しているわけですが、もちろんそれは偶然に過ぎません。
読んでみて面白かったら、ぜひ続編を買ってください。たったの¥250、牛丼よりも安い値段、どぶに捨てたと思えばどうってことありませんね。


 また、サハラという作品も現在¥99で出血値引きセールス中です。エジプト神話の世界に心惹かれること請け合いです。


 その他作品のサンプル集も無料でダウンロードできます。


 では、よろしくお願いいたします。