2012年12月7日金曜日

「ワンダーランド」へ込めた思い

 この作品を書いたのは、たぶん今から二年ほど前だと思う。当時勤めていた会社を後先も考えずに辞め、路地に渦巻く木枯らしを眺めながら妄想に夢を膨らませていた頃である。きっかけは、おそらく自分に対する失望であったに違いない。拝金主義にすっかり染まっていた私は、とても大切なものを捨ててしまっていた。それは、民度である。
 山口県の片田舎で幼少時代を過ごした私は、高度成長の波に浮かれながら、いつしか大切なものを捨ててしまった。結果主義、あるいは即物的な価値観、およそ人を不幸に貶める悪魔の声に心奪われてしまっていたのだ。
 まやかしの社会的地位、搾取の結果でしかない高給、それらを全て捨て去った時、初めてそれに気付いた。そして人間のあるべき本質を描きたいという、内から込み上げる衝動に駆られたのである。
 二年前のこの作品を読んで改めて思うのは、あの時壊れたことは決して無駄ではなかったということである。

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