2016年8月3日水曜日

個人出版主にとってのKindle Unlimited

 すでにご存じの方も多いと思いますが、Kindle Unlimitedという月額定額制読み放題プログラムが本日開始になりました。いきなりです。対象作品を販売している個人出版主への事前告知もなく(笑)。
 料金は月額980円、微妙な値付けですが、初回30日間は無料で利用可能とのこと。とりあえず利用してみて、それから正式な会員になる人も多いかもしれません。
 問題は読み放題の対象となる書籍のラインナップです。雑誌や実用書はかなり充実しているようで、この辺りを定常的に読まれている方にとっては魅力的なサービスになりそうです。一方で小説はそれほどではなく、特に新刊やベストセラーはかなり限られているようです。

 さて、このサービスが読者にとって魅力的かどうか、あるいはビジネスとして成功するかどうかは、他の専門家の方々に任せるとして、ここでは読者としてではなく、個人出版主として、この先自分たちを取り巻く環境がどのように変わるかを推測してみます。

1.次第に作品が売れなくなる

 まずはKindle Unlimitedの対象となっている作品の、アマゾンの書籍紹介のページを見てみましょう。

 
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 デカデカと「¥0円 kindleunlimited」と書かれ、その下に小さく目立たない字で本来の価格が記されていますね。これを見て正価で買おうと思う人は少ないのではないでしょうか。つまりKindle Unlimitedを利用していない読者も、なんだか損をする気がして購入に二の足を踏んでしまうだろうということです。

 一方で、Kindle Unlimitedの対象でない作品、これはもっと悲惨なことになりそうです。Kindle Unlimitedのユーザーが増えるにつれ、対象外の作品は確実に無視されるようになるでしょう。なにしろ敢えてそれを選ばなくても、無料で読める作品が無数にあるわけですから。そうなると多販路戦略を取っている個人出版主も、販売方法を見直す必要が出てくるかもしれません。
 といってもアマゾンの競合(●天k●boとか)も、今後同様のプログラムを始めるに違いありません。なにしろこのまま放っておけば、読者以前に、作家が次々とアマゾンでの専売に切り替える(作品をKindle Unlimitedの対象にする)可能性があるからです。そうなれば読者も次第にアマゾンに奪われることになってしまうでしょう。

2.読者数は少し増えるかもしれない

 先に述べたように販売数は減る可能性がありますが、読者数は増えるかもしれないと思っています。理由は『知名度という障壁』の低減効果です。財布を気にせず気軽に読めることから、それまで日の当たらなかった作品が多くの読者の目に触れる可能性が生まれるというわけです。これは先行してサブスクリプションモデルを導入した音楽業界を例に取るとわかりやすいでしょう。以下の記事でそのあたりが丁寧に説明されています。



3.ロイヤリティー収入はあまり変わらないか、少し増えるかもしれない

 最後に気になる収益への影響ですが、自身の作品をKindle Unlimitedの対象にしている限りはほとんど変わらないのではと思います。販売数が減った分、Kindle Unlimitedでのページカウントが増えるというわけです。
 ただしKindle Unlimitedの対象外にしている場合は話は別です。近い将来、激減することになるかもしれません。
 先日(まさにこのKindle Unlimitedがらみで)アマゾンのアカウントを剥奪されようかというそら恐ろしい経験をした小生は、これからは多販路戦略を取ろうかと考えていました。しかしKindle Unlimitedにサービスの開始に伴い、またまた戦略を見直す必要があるかもしれません。

 ちなみに現在小生の作品の多くはKindle Unlimitedの読み放題プログラムの対象です。

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