2014年12月2日火曜日

時代と共に変化する言葉 #言葉のお勉強

 さて、「腰が重い」という慣用句がありますが、もちろんその意味は、「やる気がない」だとか「やる気が起こらない」ということで、まさに私にぴったりの言葉なわけですね。そしてその反義語はというと、「腰が軽い」であり、一般的には「フットワークが軽い」といった良い意味で使われることが多いようです。(「軽率」という悪い意味もありますが、この意味で使われることは少ないように思います)

 これと似たような表現に、「尻が重い」というものがあります。腰を尻に変えただけで、その意味はというと、やはり「やる気がない」ということだそうですが、小生はこの言葉にはあまり馴染みがありません。使っている人も見たことがありません。そもそも、「彼女は尻が重い」とか言ってしまったら、別の意味(物理的な意味)に捉えられてしまい、えらい事件に発展しそうではないですか。(やはり「腰が重い」の方がしっくりきますね)
 一方で、「尻が軽い」という言葉はいたってポピュラーで、ただしその意味はというと、決して「尻が重い」の反対にはなっていません。そう、これは女の浮気性を表す言葉ですね。そして尻が軽い女のことを、世間では尻軽女というわけです。(尻が軽いを辞書で引くと「動作が敏捷である」という意味も記されていますが、この意味で使う人はまずいないでしょう。「君は尻が軽いね」と、仮にいい意味をこめて言ったとしても、その瞬間に、あなたと彼女の人間関係は二度と修復困難な状況に陥るに違いありません) 
 ところで、「尻が軽い」以外で、浮気性と同じ意味を持つ言葉にはどんなものがあるでしょう?

身持ちが悪い 放蕩 淫蕩 ふしだら

 おおっと、興味深い言葉が出てまいりましたね。

ふしだら

 この「ふしだら」、漢字ではどう書くのでしょうか? さっそく調べてみました。 ありません……。まあ、無理やり書くとすれば、「不修多羅」ってところでしょうか。どういうことかというと、その語源から説明しなければなりません。
 この「ふしだら」という言葉、サンスクリット語の「sutra」を音写した「修多羅(シュタラ)」が語源のようです。「sutra」というのは、古代インドで教法を書いた葉を束ねて閉じるのに使った紐のことだそうで、それが「修多羅」と音写され、正確でゆがみがなく秩序よく束ねることを意味するそうです。それが音転訛して「しだら」となり、それに否定の「不」をつけて「ふしだら」になったとのこと。

 ところでこの「ふしだら」と語感も意味も似ている、「だらしない」という言葉がありますが、こちらの語源は何なのでしょうか? じつはこの「だらしない」という言葉、元は「しだらない」という言葉だったのです。それが音位転換と言って、文字の順番が入れ替わって出来たものらしいです。この「しだらない」の「しだら」は、「自堕落」という「好ましくない状況」を表す言葉が転化したようで、それに強調の意味の~ないを付けて、しだらない。意味は、現在のだらしないと同じで、「締まりがなく、秩序がない」です。とある本によると、本当かどうかは知りませんが、この「しだらない」という表現は、いまだに山梨県に残っているそうです。
 それにしても「しだらない」が「だらしない」……こうなるともう、マスコミ用語の「ジャーマネ」(マネージャー)や「ぐんばつ」(ばつぐん)とかと何も変わりませんね。
 ちなみに、これと同様に音位転換をしたものに、「新しい(あたらしい)」という言葉があります。この「新しい」は、じつはもともとは「あらたしい」で、これが音位転換をした結果であり、こうなるといつか将来、「わんばんこ」だとか「うらまやしい」とかも、正しい言葉として定着するかもしれませんね。

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