2013年11月16日土曜日

電子書籍時代の、勝利の方程式

おいっ!

 な、なんだよ・・・・

なーにが勝利の方程式だ! 業界のラストランナーのお前の話なんぞ、聞きたくもないわっ!

 まあ落ち着きなよ。せっかくためになる話をしようとしているんだから。いいかい、僕にはわかったんだよ。書籍ビジネスの向かうその先が。鍵は、品質の担保だね。

品質の担保?

 そうだよ。例えば本を読もうとするとき、君は何を基準に選ぶ?言っとくけど表紙がエロいとかは無しだからね。えっ、世間の評判

とても良い答えだね

 で、ほかには? 出版社? それも悪くないね。日和見主義で主体性のない君らしい考えだ。でも間違ってはいないよ。世間の人の大半はそうなんだから。そして、まさにそこに勝利の方程式が隠されてるってわけさ。その秘密を解く鍵が、君の言った世間の評判出版社という言葉に隠されているわけだ。

 実際これまでは、書店の目立つところに並べられた大手出版社の本が飛ぶように売れたわけだ。でも決して面白いから売れたわけじゃない。なにしろ読み終わるまではその本が面白いかどうかなんてわからないわけだからね。じゃあなぜ人はそれを買うのか?

面白いに違いない、からだよ

 大手出版社の厳しいフィルターにかけられ、とことんチェックされた作品、、しかも書店がコストをかけてまで売り出す作品。それだけで面白さが担保されていているわけだよ。だから人は安心してその本を買う。その次に来るのが、世間の評判さ。まずは人に読まれなきゃ、評判も何もあったもんじゃないからね。

まさにお前の本だな

 ・・・まあね。で、そこで次代の電書ビジネスの話になるわけだ。まずは出版社。これは今言ったように、電書の世界においてもとても重要な役割を果たすと思うよ。でも従来とはその存在意義が大きく変わると思うんだ。なにしろ、製本や流通といった機能はどんどん必要なくなってくるわけで、一方で、良作を発掘してそれを磨き上げる能力が、今まで以上に重要になってくる。つまり作品の質が今まで以上に重要になってくると思うんだ。なぜならば、電書時代になるとネットの存在がとても大きくて、評判を思うようにコントロールできなくなってしまうからだよ。好評にしろ悪評にしろ、瞬く間に世間に広まってしまうからね。

 そういう時代に対応するためには、紙の本の製造や流通に割いてきたリソースを出来るだけ早く縮小し、代わりに、創作に対して今まで以上にリソースを投入した会社が成功をおさめるんじゃないかと思うんだ。この出版社の作品なら、きっと面白いと、品質を担保できる会社こそが、より成功をおさめるんじゃないかと。

 でも、よくよく考えたら、それは従来の出版社じゃなくても出来ることなんだよね。むしろ製造や流通といったよけいな負の資産がない分だけ、却って新参者にチャンスがあるのかもしれない。要は、良作を厳選し、それを完成させる能力、さらに言えば、それを売り込む広告宣伝の力。もちろん、世間から認められるには時間がかかるだろうし、すぐには成功しないだろうけど、品質を担保できることがいったん認知されれば、新しい形態の、いわゆる電書販売元として確たる地位を築けるかもしれないよ。
 
でも、メガネにかなわない君のような個人作家は、ますます居場所がなくなるね

 まあそういうことさ・・・だから今のうちにたくさん作品を書いて、次代が訪れるまでの短い春を謳歌しようってわけさ。

だから、もう僕のことはほっといてくれ
   

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