2013年8月10日土曜日

ビール工場に見る日本の美徳

 今日はこのクソ暑い中、家族に無理やり連れられてビール工場の見学に足を運んだ。場所は生麦、そう、キリンビールである。今日の出来事をお話しする前に、まずは日本のビールの歴史からおさらいしておこう。

 日本で最初に(商業目的で)ビールが造られたのは1870年――今から143年前――のことであり、場所は僕の住む横浜だ。つくったのは、ウィリアム・コープランドというおっさん。驚くことに、彼はドイツ人ではない。ノルウェー生まれのアメリカ人だ。ドイツで5年間ビール造りを学んだらしい。つまり日本のビールの歴史は、本場とは距離を置いたところから始まったというわけだ。
 その後ウィリアムのつくったブルワリーは現在のキリンビールへと引き継がれることになる。最初は瓶詰めだけだったビールに革命が起こったのは、1960年、すなわち缶ビールの誕生である。

 さて、話を戻して工場見学の話に。京急の生麦の駅を降りて、灼熱地獄の中を歩くこと10分、キリン横浜ビアビレッジの案内板が見えてきた。すでに(二日酔いの)頭はくらくらで、背中から噴き出た汗がお尻にまで達している。ビレッジの中に足を踏み入れたときの感動、それはもう言葉では言い表せない。冷気が身体を包み込み、それまでのすべての苦悩を癒やしてくれる。そんな感じだったのだ。
 バッジを渡され、すぐにツアーが始まった。製造過程の順にそって、それぞれの工程を見て回る。小学生の娘はまるで興味なさげで、「ちゃんと話を聞きなさい」と母親に怒られている。ザマーミロ



 まあ見学はあくまでもおまけであって、本命はここからだ。ホールに案内され、試飲が始まる。そう、「一番搾り フローズン<生>」である。


 なんとも素敵なホールではないか。さっそく試飲に。おつまみも付いてくる。


ソフトクリームのようだけれど、この泡(というかシャーベットに近い)もしっかりと酒である。フローズン生は1杯目だけで、あと2杯、いくつかの銘柄から選んで試飲できる。僕が選んだのは、スタウト、そう、黒ビ―ルである。
 

 もう半分以上飲んでしまった。横に置いてある缶は、お土産にいただいた『澄みきり』っていう5月に発売になった新製品。残念ながら冷えていない。家に帰って冷やして飲んでください、そういうことだそうだ。

 と、事件はここで起こった。近くの席に座った40代前半と思しき夫婦が、コンビニのビニール袋を引っ張り出し、中からつまみを出して広げ始めたのだ。枝豆やチャーシュー、完全な宴会モードである。そしてしばらくするとキリンの係員がやってきて、「お客様、ここではお持ち込みの飲食はご遠慮させて・・・」と注意した。しかし敵もさる者、少々のことでは怯まない。それどころか逆に、

「こまるなあ・・・そういうことは、先に言ってくれないと

 僕は唖然とした。鈍感力、凄まじき。まるでキリンの方が悪いかのような言いぐさ。




 まあ色々あったけれど、めでたく試飲を終え、我が家族は昼食を摂りにレストランへ。


 森の中に現れた赤煉瓦造りの洒落たレストラン。素晴らしい! いざ店の中へ。


 ここはドイツか、と思わせるような荘厳な造り。これもまた、素晴らしい!

 と言うことで、今日は無事に、ビール工場の見学を終えたのであります。

 今日感じたこと。

 ビール造りへのこだわりは半端じゃない。日本人ならではの気配りもそうだ。しかし、例えば一番搾りがそうであるように、そのこだわりや気配りは、はっきりとした形では現れてこない。結果として表れるのは、とても微妙な違いにしか過ぎないのだ。でもそれにこだわるのが日本の美徳であり、その気持ちが伝わってこその”逸品”なのである。
 しかしこういった美徳は、西洋的な合理主義の前に片っ端からつぶされつつあり、表面だけの、浅薄な価値観が席巻しているのも事実。残念で悲しいことだ。

 でも今日の工場見学で僕は確信した。日本人、やっぱ素晴らしいわ、と。

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