さて今日は神話にまつわる、ちょっと面白い話を。その神話というのは、あの有名なギルガメシュ叙事詩っていうやつです。古代シュメール遺跡から発見された神話なわけですが、その物語の主人公であるギルガメシュが、とても興味深いんです。
『ウルクの城に生まれたギルガメシュは、神々の恵みを受け立派に成長して王となるが、国民に乱暴を働くようにる。それに困った人々に救いを求められた神々が、ギルガメシュのライバルとしてエンキドゥを創造する。
最初二人は対決し闘うが、やがて二人は無二の親友となり、さらには怪物退治をして国の英雄となった。
その後ギルガメシュは女神イシュタルに誘惑されるもそれを断り、怒ったイシュタルは、巨大な天牛を差し向ける。二人は力を合わせてこれを退治するも、その呪いのせいか、エンキドゥが病に倒れ、衰弱して死んでしまう。ギルガメシュは親友の死を悲しみ、死を恐れるようなり、そしてついには不死を求めて旅に出た』
ちっとも面白くねーじゃねーか
最後まで話を聞いてください。ものには順番というものがあって――
早くしろよ、ぼけっ
わ、わかりました。実は面白いのは物語そのものではなく、ギルガメシュの生い立ちなのです。叙事詩によれば、彼は母親が神で、父親が人間となっています。ところが一方では、三分の二が神で三分の一が人間、という記述もあるのです。どうでもいいことかもしれませんが、とても引っかかるのです。ハーフなら、両方とも二分の一だろうが、と。そこで遺伝子の出番なわけです。
大丈夫かよ、おっさん……
黙ってろ、タコ野郎。で、遺伝子なんですが、それを構成するのはDNAです。皆さんも学校で習った、いわゆる二重ラセン構造ってやつです。でも、実はこのDNAには二種類の、まったく異なるものが存在します。一つが核DNA。これがメインのやつで、一般にDNAというと、こいつを指します。そしてもう一つが、ミトコンドリアDNA。そう、かの有名な小説、パラサイト・イヴに出てくる、あいつです。
では、それぞれの役割はというと、核DNAの方は人間の基本的な動作をつかさどます。その一方でミトコンドリアは、細胞が活動するためのエネルギーを生成しているんです。たとえて言えば、人間の中の発電所のようなものです。まあいずれにしても脇役的な存在には違いなく、まるで僕の人生を転写したような――
おめーの話なんて聞いてねえよ
大変失礼いたしました。話を戻します。
で、面白いのが、その遺伝の仕組みなんです。核DNAは両親から受け継ぎますが、実は、ミトコンドリアDNAは母親からしか受け継がないんです。パパのミトコンドリアDNAは完全に無視されてしまうわけです。と、
もう頭のいい読者はおわかりですね
わからない? それは残念です。でも心配なさることはありません。景気も上向きだと聞いています。多少頭が悪くたって、何とか生きていける世の中になるんじゃないでしょうか。
で答えですが、子供が受け継ぐ遺伝子には3つあって、1つが父親の核DNA、1つが母親の核DNA、そして最後が母親のミトコンドリアDNAなわけです。だから、父親から受け継ぐのが三分の一、母親から受け継ぐのが三分の二。神話の話にピッタリ合致しますね。
ここからは百パーセント、僕の推測です。
寿命を決める因子は核DNAの中にあって、彼は神と人間の中間を受け継いだのでしょう。不老不死ではないけれど、それなりに長生き。でもパワーは桁違い。なにしろ神である母親のミトコンドリアDNA――つまりスーパーチャージャーつきハイパワーエンジンを得たわけですから。
これですべてのつじつまが合いましたね。
無理やりじゃねえかよ――
悲しいですね、夢を見れないバカヤロウって。
と言うことで、最後に少し宣伝を。僕の小説のいくつかは、このような夢のある神話を題材にしています。それは以下の3作品です。
【聞かせてくれ、命の調べを】
【優しい悪魔】
【出来損ないの天使】
但し断っておきますと、神話には確かに夢がありますが、僕の作品に夢があるかどうかは、保証しかねます。もちろんクレームは受け付けますが、
消費者庁にはタレこまないでくださいね
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